展示・発表一覧

第3回AIロボット駆動科学シンポジウム(2025年12月5日開催)における企業展示・研究展示およびポスター発表の詳細をご紹介します。

企業展示・研究展示

E-01

AI素材探索と証拠保全が創る新しい研究基盤

トヨタ自動車株式会社

トヨタ自動車では様々な新事業の開発を進めています。その中から二つ、データ解析クラウドサービス「WAVEBASE」とデータ保全サービス「PCE」をご紹介致します。
・WAVEBASE:実験データや材料の組成・プロセスデータを自動解析し、データ駆動でお客様の課題解決をサポートします。解析スピードをアップし、開発効率化が可能です。
・PCE:ブロックチェーンを活用し、データのオリジナル性を長期にわたってグローバルに証明できます。技術情報の証拠力を高め、情報の不適切な取り扱いや知的財産権に関する紛争・訴訟の対応力を強化可能です。

E-02

日立の独自AI「B3」によりオミクスデータの解析業務を高度化・効率化

株式会社日立製作所

日立は小サンプル・高次元のデータでも高い汎化性能・予測精度で解析できる技術「B3」を開発し、データドリブンで探索業務の効率化、新しい発見に貢献しています。代謝物データ、RNA-Seqデータなどの解析事例があり、重要遺伝子、マルチバイオマーカー、リスク因子の探索などに活用されています。「B3」の事例紹介と、クラウドサービスとしてご利用いただける「B3 Analytics」をご紹介します。また、創薬プロセスにおいて我々が取り組んでいる生成AIの活用事例をご紹介します。

E-03

レーザー回折/散乱式粒度分布計の自動化ソリューション

株式会社堀場製作所

HORIBAの粒度分布測定装置は、ロボットアームによる試料の自動搬送機構を付加できます。試料投入から測定までを自動化し多検体連続測定に対応、測定者の負担軽減とヒューマンエラー防止を実現します。ロボットアームによる精密かつ再現性の高い動作で、研究・品質管理の効率化と測定信頼性の向上を両立します。このような自動分析ソリューションとデータマネジメントシステムSTARS Enterpriseによって、HORIBAはお客様の最先端の研究を支えます。

E-04

搬送機能を備えた分注ロボットシステム

楢崎 鴻司朗(Tsubame Lab株式会社)

プレート搬送機構を備えたオープンソース分注ロボットを展示します。分注・搬送動作に加え、カメラ映像による記録とクラウド上でのログ管理を実現します。AIが自然言語入力から自動で制御コードを生成し、プログラミング知識がなくても実験を自動化可能です。他のロボットや装置とも連携できる柔軟な構成で、低コスト・高再現性な研究自動化環境の構築を目指します。

E-05

高機能部材開発のためのロボット活用とスマートラボシステム開発

栗原一真(産業技術総合研究所 製造基盤技術研究部門)

微細構造体を利用し、光や濡れ性などが制御できる高機能部材の開発を行っています。研究開発活動では、研究の効率化が必要であり、協働ロボットを用いたサンプル作製・計測の自動化や、スマートホンを用いたプロセス条件等の入力やラボ管理機能を統合したスマートラボシステムを開発しています。これらDXシステムを活用することで、普段の研究活動では見逃してしまうデータをシステムが発見する機能を構築し、高機能な部材開発やプロセスノウハウの蓄積を行っています。展示では、開発部材や、実験室のDX化について紹介します。

E-06

ROPES初号機

浦鉄将(東京大学 長藤研究室)

2019JST未来社会創造事業「粉体成膜プロセス研究のハイスループット化のためのデータ駆動型プロセスインフォマティクス」の成果として製作したROPES(Robotic Objective Process Exploration System)の初代プロトタイプを展示します。実際には燃料電池の触媒インクの乾燥プロセスを自動実験・自律探索した装置ですが、安全のため、デモでは墨汁を用いてデモします。

E-07

協働ロボットによるグローブボックス内の粉体実験自動化

山口祐貴(産業技術総合研究所)・西山禎泰(愛知工業大学) 他

グローブボックス内での粉体実験を自動化するために、協働ロボットを活用した実験システムを構築した。少ない協働ロボットで多くの実験を可能にするためのからくりジグを紹介する。

E-08

人とAIロボットの創造的共進化によるサイエンス開拓

原田香奈子(東京大学大学院医学系研究科)

プロジェクト概要と成果を紹介する。展示としては、展示会場からロボットシステムを遠隔操作する様子を紹介する。操作者はVRヘッドセットを装着し、遠隔地(東京大学)にあるロボットシステムのデジタルツインを複合現実(MR)で確認しながら遠隔操作する(DOI: 10.1109/VRW66409.2025.00102)。バイオハザード環境やクリーンな環境など、人が容易に立ち入ることができない環境で科学実験を行う場合に、ロボットを遠隔操作したり、AIのための学習データセットを収集する目的で使用する。

E-09

ロボットアームによる粒子径を制御した粉体粉砕

高本龍世(大阪大学工学研究科物理学系専攻 小野研究室)

ロボットによって所望の粒子径の粉体を得られるように粉砕を行うシステムについてのポスター展示を行います。本システムでは、ロボットアームが粉体を粉砕しながら、乳鉢の振動から粒子径を推定することで、所望の粒子径に到達した段階で粉砕を終了することができます。またデモスペースではCobotta(DENSO WAVE)という人協働ロボットを使用し、ロボットアームが乳棒と乳鉢を用いて粉体粉砕作業を行う様子を実演します。

E-10

Dual demonstrationによる化学実験自動化システム

佐々木光(奈良先端科学技術大学院大学 助教)

本研究では、化学実験自動化システムの柔軟に拡張するため、化学者自身がロボット動作と治具操作を同時に教示できるデュアルデモンストレーションを提案する。ロボットハンド形状の教示デバイスと治具、モバイルマニピュレータを統合し、化学者の実演をもとに自動実験を実現した。高分子合成の模擬実験において動作再現を達成し、ロボットの専門知識を要さず直感的にロボット実験自動化を構築できることを示した。

E-11

NIMOによるミルククラウン形成条件の探索

吉川成輝(東京科学大学 総合研究院)

牛乳を薄く張った液面に液体を一滴落とすと、液滴の衝突速度や液層の厚さなどの条件に応じてミルククラウンと呼ばれる王冠状の構造が形成されることがある。本展示では、自律自動実験のための汎用ソフトウェアNIMOと2台のロボットアームを使ってミルククラウンの形成条件を効率的に探索するデモを行う。

E-12

NIMOが命を吹き込んだAI搭載型・自動実験システム

田村亮・松田翔一(国立研究開発法人 物質・材料研究機構)

自動自律実験を実現するためのオープンソースソフトウェア「NIMO」を開発し、これを活用した自動自律実験装置の開発を進めています。自動実験装置にNIMOを導入することで、最適な実験条件の自動選定と、それに基づく自動実験装置による材料合成・評価というクローズドループを実現してきました。これにより、人の介在なしに効率的に実験を推進することが可能です。装置展示では、NIMS電気化学自動実験ロボット(NAREE)で使用している並列電気化学セルを紹介します。

E-13

Leaf Sampling Using a Robotic Manipulator

常家瑞・万偉偉(大阪大/理研)・田中信行・佐藤諒一・藤田美紀(理研)・原田 研介(大阪大)

This work is about automated leaf cutting and collection for lab purposes. We propose a single-arm method, using a customized end-effector to hold and cut the leaf. The pose of the leaf is determined via learning-based method and the final position of interaction is obtained after closed-loop iterative refinement.

ポスター発表

P-01

自律型実験システムAutonomous Labのご紹介

伴野太一(株式会社島津製作所)

島津製作所で目指しているDesign→Build→Test→Learnの実験サイクルを自動で回す自律型実験システムAutonomous Labの概要紹介です。バイオものづくりを初期ターゲットとしたプロトタイプの内容をご紹介させていただきます。

P-02

大規模言語モデルを用いた新規量子化学計算法の自動探索

羽飼雅也(トヨタ自動車株式会社)

量子化学計算は分子レベルのシミュレーションを可能にする一方で、大きな分子系を現実的な時間で扱うためには、計算コストを削減する近似手法の導入が不可欠である。しかし有用な近似手法の創出には、物理・化学・数学・情報科学をまたぐ学際的な知識、実行時コストの予測困難性、高い実装コストなどが障壁となる。本研究では大規模言語モデルを用いて新規量子化学手法の発案・実装・検証を自動化し、多様な学際的アイデアを高速に試行することで、有望な近似手法の自動探索を行う手法を提案する。

P-03

AI-for-Scienceに向けた領域特化型基盤モデルの開発

追川優菜(東京大学大学院 津田研究室)

AI-for-Science領域における2つの大規模モデルとして、(1) 非天然アミノ酸を組み込んだペプチドミメティクス設計のための基盤ペプチド言語モデル GPepTおよび (2) 金属材料の状態図予測に特化した大規模言語モデル aLLoyMを提案し、それぞれの科学領域における知識獲得・生成・予測能力を統合的にした。

P-04

自然言語指示に基づく結晶構造生成フレームワークの開発

伊藤優成(大阪大学)

所望の物性を実現する結晶構造を設計することは、材料探索における重要な課題である。MatterGenなどの生成モデルを用いた既存手法は、数値的な物性値を条件とした構造生成において有効性を示しているものの、明示的な定量情報を前提とするため、複雑かつ多面的な設計目標を柔軟に扱うことには限界がある。本研究では、自然言語による指示から直接結晶構造を生成可能とする、テキスト条件付き構造生成フレームワークを提案する。

P-05

物体中心世界モデルと影響関係を考慮した方策学習

西本遥裕(大阪大学)

深層強化学習エージェントはサンプル効率が著しく低く、実世界への応用が難しい。この問題に対して、世界モデルを学習するモデルベース強化学習手法が数多く提案されており、一定の成功を収めている。しかし、複数の物体が存在する複雑な環境において、強化学習エージェントが世界モデルを獲得することは、依然として困難である。本研究では世界モデル、方策関数、価値関数の全てが物体中心表現を扱うTransformerで構成された強化学習エージェントを提案し、複数のベンチマークにおいてその有効性を確認した。

P-06

細胞培養のテーラーメードな実験自動化ツールの開発

芝井厚(理化学研究所 基礎科学特別研究員)

微生物培養実験を対象に、既存の培養・測定機器を生かしつつ、GUIラッパーと低コストなロボット搬送を組み合わせたテーラーメードな自動化ツールを開発し、薬剤耐性進化実験とストレス耐性付与実験で有用性と汎用性を検証する。

P-07

条件付き生成モデルの柔軟な制御について

齋藤邦章(オムロンサイニックエックス株式会社)

言語や化合物構造といったデータを生成するモデルは様々な条件から所望の出力を得ることが期待される。本ポスターでは、画像から説明文を生成するVision-Language Modelを中心に、条件付き生成モデルに対して得られた知見を発表する。なお、本ポスターの成果はICCV2025で発表済みのものとなる。

P-08

既存実験装置の自動化を推進するROS2/PLC連携と自動アーク炉の建設

寺嶋健成(国立研究開発法人 物質・材料研究機構)

既存実験装置の多くは未だplug&playのように自動化するには技術的障壁が存在する。我々はROS2とPLCを用い、LAN通信できるものはROS2で、できないものはPLCを介してそれぞれをROS2ノードとして扱うことで実験機器が独立・並列かつ必要に応じ連携して動けるフレームワークを構築し、アーク炉による固体バルク材料の自動合成システムを作成した。

P-09

Discovering New Theorems via LLMs with In-Context Proof Learning in Lean

笠浦一海(オムロンサイニックエックス株式会社 リサーチエンジニア)

本研究では、LLMが新規定理を発見する能力に着目する。数学的予想を自動生成し、定理証明支援系の一種であるLean 4形式で証明する「予想-証明ループ」パイプラインを提案する。本手法の特徴は、過去に生成した定理とその証明を含む文脈を用いてさらなる予想を生成・証明することである。これにより、LLMのパラメータを変更せずに、証明戦略のインコンテクスト学習を通じてより困難な証明の生成が可能となる。

P-10

深層学習による連成系とマルチフィジックスのモデル化について

コスロービアンラズミックアルマン(大阪大学大学院 基礎工学研究科 システム創成専攻修士2年)

深層学習は、支配方程式が未知の力学系のモデリングにおいて大きな成功を収めてきた。しかし、既存手法の適用は主に機械系に限られており、システムを一体的に扱うため連成系をそのままモデル化できない。そこでディラック構造を用い、機械系や電気回路など複数の領域にまたがるシステムや各要素の相互作用と制約を統一的に表現できる深層学習モデルを提案する。実験の結果、提案手法は素子間の相互作用を適切に学習し、既存手法以上の長期予測性能を有することを示した。

P-11

分散開発に対応した次世代実験ロボットの開発

堀之内貴明(理化学研究所 生命機能科学研究センター 技師)

AIロボット駆動科学の展開に向けて、我々は多様な科学研究データの学習と生成を可能にする技術として、自律的・能動的に学習するロボットラボとシステム基盤の提供を目指している。そのために、生命科学実験の分散開発に対応した次世代型実験ロボットシステムArdeaと実験記述言語LabCodeを開発している。生命科学分野には多様な実験プロトコルが存在しており、それらを効率よく実装するためには分散開発とそれによるネットワーク効果が重要な要素と考えており、その実証に向けた開発状況について紹介する。

P-12

A Minimal Open-Access Platform for Laboratory Automation Training

野口大貴(理化学研究所 高橋研究室 客員研究員)

本研究では、低コストで再現性の高いラボオートメーション(LA)教育用システムを開発し、OT-2分注機とAbsorbance-96プレートリーダーを連携させるDIY-LA機器をオープンソースベースで製作した。本システムにより、LAの基礎要素である「サンプル調製」「測定」「実験デザイン」の個別習得と、それらを統合した実験システム構築を簡便に学習できる。慶應義塾大学学部学生を対象としたベイズ最適化実習において、高い教育効果が確認された。

P-13

自動自律実験を支援するソフトウェア:NIMO

山口祥司(国立研究開発法人 物質・材料研究機構 エネルギー・環境材料研究センター)

自動自律実験のクローズドループを容易に形成することを目的として、汎用的ソフトウェアNIMOを開発し、オープンソースソフトウェアとして公開しています。NIMOでは、ロボット実験装置と探索AIをそれぞれ独立したモジュールとして扱っており、ロボット実験装置とAIアルゴリズムの組み合わせを柔軟に選定することで様々な自動自律実験が行えるように設計されています。特に、探索AIアルゴリズムは複数のオプションを実装しており、一つのロボット実験装置で様々な用途の探索が実施できるように工夫しています。

P-14

JSTさきがけ「研究開発プロセス革新」の紹介

竹内一郎(名古屋大学・教授)

本ポスターでは、JSTさきがけ領域「AI・ロボットによる研究開発プロセス革新のための基盤構築と実践活用(研究開発プロセス革新)」の紹介を行う。(掲示のみ)